研究概要 |
1.当初の計画ではバックグラウンドとして^<137>Csのみを考えていたが,通常の人体軟部組織(水で近似)内には濃度約60Bq/kgの^<40>Kが存在する。^<137>Csとともに^<40>Kも水中に一様分布すると仮定した。これによってより実際に近い条件になったといえよう。他の線源と同様,^<40>Kからのβ,γデータを採り入れて線源サブルーチンを作成した。^<90>Srのみを含む直径Bの骨の周囲を,^<40>Kと^<137>Csを含む厚さWの水が取り囲んでいる脚部ファントムについてシミュレーションを行った。その結果,以下の事柄が明らかになった。 (1)検出器に入射する^<90>Sr制動X線スペクトルは60keV近傍にピークがあり,半値幅100keV程度の幅広い連続スペクトルであった。もじバックグラウンドがなければ,十分な測定時間をかけることによって容易に検出可能であることが分かった。 (2)バックグラウンドとして60Bq/kg ^<40>K+1Bq/kg ^<137>Csが水中に分布すると仮定した。その際スペクトル解析を工夫すれば1Bq/kg ^<90>Srでも検出可能であることが分かった。 (3)次の手順で^<90>Sr濃度を評価できる。通常の高エネルギーγ線測定によって得られる^<40>Kと^<137>Cs濃度より計算によってバックグラウンドスペクトルを求める。200keV以下の低エネルギー領域に注目して,それと実測値を比較する。その差が^<90>Sr成分となる。 (4)BとWの値をいろいろ変えて検出器に入射するスペクトルを求め,結果を比較した。最良のS/N比はB=50mm,W=1mmの条件下で得られた。 2.これまでは測定部位,つまり検出器の位置を脚部として計算を行ってきたが,次年度は腰部(平板二層)ファントムに対するシミュレーションを計画している。脚部と腰部の結果を比較することによって、いずれが測定部位として適しているのか見通しをつけることができる。
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