研究概要 |
申請者らは、これまでの研究によって、1)生体に取り込まれたディーゼル排気粒子状物質(DEP)が化学反応によって、活性酸素であるO_2^-を産生し、その結果生体に障害を与えること、更に、2)DEP中には活性酸素分解酵素であるカタラーゼの活性を阻害する因子が存在することを見いだし、DEPがこれら二つの機構によって細胞に障害を与える可能性について報告した。本研究においては,DEP中のO_2^-生成因子の分離・精製とその生理作用の解析、更にDEP中のカタラーゼ活性阻害因子の分離とその性質の解析を目的として研究を進め、以下の結果を得た。 [O_2^-生成因子の分離・精製]DEPの有機溶媒による抽出を行ない、ほぼ等重量のn-ヘキサン抽出画分、メタノール抽出画分、不溶性画分を得た。O_2^-生成因子が含まれるメタノール可溶性画分についてシリカゲルカラム、つづいてのDE52イオン交換カラム、HPLCによるクロマトグラフィーを行ない、O_2^-生成因子を更に精製した。分離・精製されたO_2^-生成因子の分子構造の解析は、ガスクロマト分析計、分離用HPLC、質量分析計を使って現在進行中である。分離されたO_2^-生成因子の細胞障害作用の評価は、来年度に行なう予定である。 [カタラーゼ阻害因子の分離・精製]DEP中のカタラーゼ活性阻害因子の分離・精製法を確立した。即ち、DEPをアルカリで抽出し、中和後順次、活性炭カラム、バイオゲル-P-2によるゲル濾過、更に分離用HPLCによってカタラーゼ活性阻害因子が分離されることを明らかにした。実験の結果,DEP中には少なくとも分子量の異なる2種類のカタラーゼ活性阻害因子が存在することが明らかとなった。これらの化合物の化学構造の解析は現在進行中である。なお、本補助金で購入されたHPLCは、上記のとおり、化合物の分離・精製と純度評価に使用された。
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