陸産等脚目とは、ワラジムシやダンゴムシなど節足動物の中でも陸上に生息する等脚目の属する腐植食性土の壌動物の一群で、この多くは比較的人間生活に身近な環境に生息している。本研究の申請者は、これまでに陸産等脚目の生態学的な研究をおこなってきたが、陸産等脚目のグループの生息種構成と、環境の自然度もしくは人為の影響度との間には、かなり密接な関係があることが示唆され、陸産等脚目の種類組成は有効な環境の自然度の指標生物になり得る可能性が確信された。本研究は、主に関東地方のさまざまな人為の影響の程度の生態系について、一定の方法で陸産等脚目の種組成とそれぞれの種の生息密度調査ならびに環境の自然度について測定し、陸産等脚目の種組成・密度と環境の自然度との間の相関関係を求めることにより、環境指標を求めることを目的として研究を行った。研究期間の内平成6、7年度殆どの時間を、東京、埼玉、福島、千葉県下の様々な程度の自然度の立地の調査に費やし、平成8年度についてはそれぞれの立地で採取した土壌やリターの分析に時間をかけた。この結果、調査地の各種等脚目の種組成と個体数密度およびそれぞれの調査地点の土壌についての情報はある程度集まったが、それらを分析するには資料が不足していることが明らかになり、分析し、なんらかの数値指標を算出することが出来なかった。これは、平成8年度科学研究費補助金経過報告書にも述べたように、本件究期間に様々な不測の学務上の事情が重なり、結果的には研究資料の採取が不足しさらには成果報告書も平成9年度に延期することとなった。今回ここに報告するのは、本研究課題に関連して本研究期間に出されたものと、研究資料の一部を報告書としてとりまとめて表すこととする。今後、別の機会に本研究によって得られた、関東地方各地の種々の自然環境における陸産等脚目の種組成と自然度の資料を基礎に等脚目による環境指標を作成する予定である。
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