1995年は、マイクロ波の生体への障害を究明する実験として、マイクロ波照射の対象をショウジョウバエの卵母細胞とした。実験に用いた材料は、キイロショウジョウバエの遺伝子系yw^iec/B^BYsc^8…y株(被照射用雌となる)、mwhjv;spa^<pol>…十株(雄親となる)である。実験方法はy株雌親の卵母細胞をマイクロ波(家庭用電子レンジ周波数2.45GHz)出力500Wで5秒、10秒、出力200Wで60秒照射処理によった。その結果生じたX-染色体の不分離は次のような手順によってF_1バエで検出した。1)y株雌を羽化後8時間以内に採取し、対照群には20個体バエ、実験群では40個体バエを培地の入った小瓶で実験開始まで飼育した。一方+株雄は羽化後1日以内に採取して雌同様の個体ずつを小瓶で各々飼育した。2)羽化4日目になってy株雌にのみマイクロ波を照射した。被曝処理された雌バエは直ちに+株雄と交配させた。交配産卵用には培地を底から3〜5cm入れた190mlの牛乳瓶を使用した。3)24時間後、雌雄親バエのみを別の新しい培地の入っている牛乳瓶に移す。この操作を対照群、各実験群において6日間繰り返すので計28本の牛乳瓶から羽化したF_1バエを教え、また性染色体異数体バエの検出を行うことになる。実験結果は、対照群計5511匹のハエから2個体雌と3個体雄の異数体バエが検出された。実験群、出力500W5秒照射のものからはF_1計3768匹中、4個体雌と1個体雄が、出力500W10秒照射ではF_1計3148匹中、1個体雌、2個体雄の異数体バエが発生した。出力200W60秒照射の計935匹のF_1バエからは1個体雄の異数体のハエの誘発のみであった。以上の実験事実から、キイロショウジョウバエの卵母細胞では、対照群と実験群に誘発された性染色体不分離による異数体バエの間には差がなく、従ってマイクロ波被曝による影響は陰性とみなされる。
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