マイクロ波の生体への障害を究明する実験は、1)上口がin vitroのヒト精子懸濁液にマイクロ波を照射し、染色体異常の出現を調査した。2)外村はマイクロ波の熱作用を、ショウジョウバエの唾腺染色体上のパフ誘発から調査した。3)マイクロ波照射対象をショウジョウバエの卵母細胞として、X-染色体不分離がF_1バエで検出されるかを調査した。1)〜3)までの実験は、電子レンジ周波数2.45GHz、出力500Wで5秒、10秒、出力200Wで60秒被爆させる処理方法ですすめた。1)の結果:in vitroのヒト精子では(1)被爆後照射時間による差は認められるが、精子懸濁液の温度の上昇がみられ、精子運動率も低下した。(2)生存した精子は、ハムスター卵に異種間受精をさせ染色体分析を行なった。マイクロ波による特定な染色体異常の増加の傾向はなく、このことはDNA損傷を生ぜめしないとして上口の実験は終了した。2)の結果:(1)マイクロ波被爆ではAshburner(1972)の記載による熱ショックパフと、新しいパフ誘発も観察された。(2)37℃、40分間湯煎器内で幼虫を飼育した時、唾腺染色体上のパフは逆に消滅する減少を示した。上述のことからマイクロ波特有な熱作用については1996年に、分子生物学的分野からの実験により追求したい。(3)の結果:(1)ある遺伝子系の雌株にマイクロ波を照射し、直ちに+雄株と交配させて羽化したF_1バエを数えた。性染色体異数体バエの検出からは対象群との間には差がなかった。この事実は上口の実験同様、マイクロ波による影響は陰性である。結果を明白にするため1996年は、対象郡にX線照射(400r)処理実験を計画する。(2)再度の実験時で、翅の奇形バエの発生、致死変異誘発による蛹から成虫バエへの羽化妨害などが見られた。1996年にはマイクロ波の特有な作用の決め手を電気泳動法から掴みたい。
|