研究概要 |
今年度はmouse macrophage-like cell lineを用いて各種石綿代替品について検討した。試験試料は、Ceramic fiber-F,Ceramic fiber-FS, Ceramic fiber-M, Micro glass wool(1-3μm),K-Ti-O whisker, TiO2 whisker, SiC whiskerの7種で、標識試料としてUICC crocidoliteとTremoliteを用いた。細胞障害性試験では、いずれの試料も1-10μg/mlの濃度範囲で細胞障害性はほとんど認めず、100-1000μg/mlで特にSiC whiskerがcrocidoliteに比し高い障害性を示した。MTT法では、100-1000μg/mlでcrocidoliteと比較してK-Ti-O whiskerが同程度の、3種のCeramic fiber,glass wool, SiC whiskerが高い感受性を示し、SiC whiskerが特に高値を示した。細胞外TNF-α量はcrocidoliteと比較して、Cermic fiberとwhiskerが増加傾向を示し、その程度はCeramic fiberで大であった。細胞内IL-1β量は、crocidoliteと比較してCeramic fiberとglass woolが同程度かやや増加傾向を示し、whiskerでは低値であった。 実験成績から、微小ファイバーであるwhiskerに比しCeramic fiberで、TNF-α,IL-1β産生能が亢進していることが示された。TNF-αは、他のサイトカインの増加に先立ち上昇することより、肺線維化関連サイトカインの変動が予測された。しかし、rodentで測定できるサイトカインは現在のところ制限されており、今後関連する他のサイトカインについてその測定法を確立することによって最適測定項目の探索を進める必要がある。また、従来用いられてきた細胞毒性試験結果とTNF-α,IL-1βの結果に相違がみられることより,今後in vivo実験により肺線維化とこれら試験項目との関連性について検討が必要と考えられた。他の代替品についても比較検討を加え、肺線維化においての生物学的特性を指標とした毒性試験を確立すると共にそれらの成績と鉱物繊維の形状、物理的、化学的特性との関連性についてさらに検索を続ける予定である。
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