緑藻セネデスムスの一種の、除草剤シメトリン感受性株と耐性株の増殖特性を調べた。増殖速度と最大増殖量は、感受性株では、シメトリン濃度が5〜80μg/Lと高くなるのに従って減少したが、耐性株ではどの濃度でも影響を受けず、同じ値を示した。10〜15μg/Lのシメトリン濃度を堺にして、これより濃度が低い場合は、増殖速度も最大増殖量も感受性株の方が耐性株よりも大きくなった。このことは、除草剤のストレスのない環境では、感受性株が藻類群集中で優占することをよく説明する。従って、本研究の結果から、藻類でもストレス耐性の系統は、耐性構造を作るとか耐性機構を働かせるためにエネルギーを使うため、ストレスのない環境では感受性系統に対して生活力で劣ることが明確に示された。 除草剤散布時期には、10μg/L程度のシメトリン濃度は、自然の水系ではしばしば検出される。これに同時に検出される他の除草剤との相加影響を考え合わせると、除草剤散布時期の河川水等の除草剤の毒性はもっと高くなることが予測される。従って、10〜15μg/Lという除草剤濃度より高い濃度で感受性系統から耐性系統への変換が起こることは、自然環境でも耐性系統への変換が起こっていることを示唆している。 また、当初の計画では平成7年度の予定であった、自然の藻類群集への応用のための予備的研究を行った。除草剤が河川に混入する時期に河川から多くの藻類株を分離し、その除草剤感受性を調べた。除草剤としては、河川水中に検出され、藻類に対して最も毒性の高いことが報告されているプレチラクロールとシメトリンを用いた。その結果、藻類の分類群によって除草剤暴露に対する反応が異なることや、除草剤の物性によって藻類の反応が異なることが解ったが、いずれにしても最も毒性の高い除草剤の存在によって、河川中の藻類の生息が制限されていることが示された。
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