研究概要 |
有機リン酸トリエステル類(Organophosphoric acid triesters:OPE)は合成樹脂添加剤、可塑剤、溶剤、消泡剤、潤滑添加剤等で広く使用され、環境中に排出されている。これらの中には変異原性を示すものや有機りん系殺虫剤とほぼ同程度の毒性を示すものがあり、環境への悪影響が危ぐされている物質である。 本研究では有機リン酸トリエステル類の生分解特性に及ぼす共存界面活性剤成分の影響について報告する。 実験に供したOPEはTOP(Tris(2-ethyl hexyel)phosphate),TBP(Tributy1 phosphate),TBXP(Tris(2-butoxyethy1)phosphate)およびTCEP(Tris(2-chloroethy1)phosphate)で、生分解の序列はTOP>TBP>TBXP>TCEPである。陰イオン界面活性剤は合成洗剤としてドデシル硫酸ナトリウム、石鹸としてステアリン酸ナトリウムを用いた。ドデシル硫酸ナトリウムは合成洗剤のなかでも分解しやすい界面活性剤である。生分解実験はRiver-die-away法を用いた。 以下に得られた知見を示す。 1。TOPはドデシル硫酸ナトリウムやステアリン酸ナトリウムの共存下でも分解される。ただし、ドデシル硫酸ナトリウム1000mg/Lの共存下では分解されない。 2。TBPはドデシル硫酸ナトリウム100mg/Lの共存下で分解が促進される。 3。TBXPはドデシル硫酸ナトリウム10mg/Lの共存下で分解が促進されるが、ドデシル硫酸ナトリウム100mg/Lの共存下では生分解性が阻害される可能性がある。 4。TOP、TBPとTBXPの生分解においてステアリン酸ナトリウム100mg/Lの共存はその生分解を阻害しない。 5。難分解性のTCEPはドデシル硫酸ナトリウムやステアリン酸ナトリウムの共存下でもほとんど分解されない。 このようにOPEの生分解において石鹸成分の影響は大きくないが、ドデシル硫酸ナトリウウムの共存はある小量の共存は分解を促進するが、多量の共存は分解を阻害することがわかった。
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