1.森林資源などの「再生可能資源」や石油資源などの「枯褐性資源」を環境資源として定義し、これら環境資源の持続可能な利用、あるいは最適な代替財への転換経路が従来の資源経済論および環境経済論においてどのように取り扱われ、またどのような理論的・政策的問題点が存在するのか焦点を当て平成6年度の研究を遂行した。その主な研究成果は、"Sustainable Use of Environmental Resources -Ecology and Economy in the Resource Econo-mics-"として発表した。 2.環境資源の持続的利用に関する経済学のアプローチとしては、MSY(最大持続収穫量)法、MEY(最大持続経済収穫量)法、動態MEY(動学的最大持続収穫量)法、減価償却法、使用者費用法が存在する。MSY、MEY:動態MEYは、MSY法を基礎として発展してきた方法である。減価償却法は、経済学・会計学における固定資本の減価償却という考え方を環境資源(自然資本)に応用したものである。使用者費用法は、ケインズの『一般理論』に由来する考え方である。 3.MSY、MEY動態MEYの概要は以下のとおりである。人間社会が利用対象としている環境資源が再生可能な最低限のストック(個体数)量以上存在するという前提の上で、資源ストックの増加量の最大値と収穫量を等しくするとき、最大持続収穫量が確保されるという方法がMSY法である。MEYはMSYの考え方に、費用や利潤という経済量を導入したものであり、動学MEY法はMEYに時間の概念を導入したものである。 4.減価償却法は、環境資源の収穫量と増加量(新規発見量)を比較し、前者が後者より大きいとき、その差額に市場価格を乗じた額を減価償却費用として計上し、資源の再生投資に充てるという考え方である。 5.使用者費用法は、有限な資源利用から得られる所得は「真の所得」と使「使用者費用」から構成されるという考え方で、「真の所得」を永久に確保するために「使用者費用」分を再投資に充てるという方法である。 6.以上の5つの方法論を、環境資源の利用における持続性基準という観点から社会的評価を行い、それぞれの意義と限界を明らかにした。MSY、MEY、動学MEYは、その前提として環境資源が正確にモニタリングされ、再生可能量以上の存在の確認が必要である。さらに、単に当該資源利用だけでなく、生態系において当該資源利用が他の対してどのような影響を与えるのかという影響評価も必要とされる。減価償却法では、短期的市場価格で評価した額で長期的な環境資源の再生費用が評価できるのかどうかという問題を抱えている。使用者費用法は所得レベルの持続性であって、生態系・環境レベルの持続性を示すものではない。 7.以上の成果を踏まえ、平成7年度は環境評価と経済評価の関連を中心に研究を進める。
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