1.環境資源の持続的利用の経済学的基準について研究を行った。その主な研究成果は、“Sustainable Use of Environmental Resources"として発表した。 2.持続的利用に関する経済学的なアプローチとしては、MSY(最大持続収穫量)法、MEY(最大持続経済収穫量)法、動態MEY(動学的最大持続収穫量)法、減価償却法、使用者費用法が存在する。 3. MSY、MEY、動態MEYの概要は以下である。人間社会が利用対象としている環境資源が再生可能な最低限のストック量以上存在するという前提で、資源ストックの増加量の最大値と収穫量を等しくするとき、最大持続収穫量が確保されるという方法がMSYである。MEYはMSYの考え方に、経済的要素を、動態MEYはMEYに時間概念を導入したものである。減価償却法は、環境資源の収穫量と増加量を比較し、前者が後者より大きいとき、その差額に市場価格を乗じた額を減価償却費用として計上し、資源の再生投資に充てるという方法である。使用者費用法は、有限な資源利用から得られる所得は「真の所得」と「使用者費用」から構成されるという考え方で、「真の所得」を影響に確保するために「使用者費用」分を再投資に充てるという方法である。 4.以上の5つの方法論を、環境資源の利用における持続性基準の観点から社会的評価を行い、それぞれの意義と限界に関して、研究を行った。MSY、MEY、動学MEYは、その前提として環境資源が正確にモニタリングされ、再生可能量以上の存在の確認が必要である。さらに、単に当該資源利用だけでなく、生態系において当該資源利用が他の種に対してどのような影響を与えるのかという評価も必要とされる。減価償却法では、短期的市場価格で評価した額で長期的な環境資源の再生費用が評価でかるかどうかという問題を抱えている。使用者費用法は所得レベルの持続性であって、生態系・環境レベルの持続性を示すものではない。
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