研究概要 |
1.富山県の和田川において降雨時調査を実施し,農薬,変異原物質および基本的な水質の時間変化特性を解明した。農薬は流域での使用量の多い15種類を分析した。変異原性はAmes Test(Salmonella typhimurium TA98,TA100菌株:S9mix添加,無添加)により分析した。調査は1995年5月と7月の2回実施した。5月の溶存態サンプルでは除草剤のPretilachlorなどが検出されたが,変異原性は陰性であった。懸濁態サンプルの変異原性試験ではTA100・+S9mixで流量増加後に生育阻害となったほかは陰性であった。7月は記録的な豪雨の期間中での調査となったため,希釈効果により農薬はすべて定量限界以下となった。溶存態サンプルの変異原性試験では生育阻害の認められる場合があった。懸濁態サンプルでは流量増加後に変異原性が擬陽性となる場合があった。 2.森林域からの流出水の降雨時流出特性を解明するため,庄川水系の小河川を対象に1995年11月に調査を実施した。溶存態サンプルの変異原性試験では生育阻害の認められる場合があったが、それ以外ては陰性であった。懸濁態サンプルでは流量増加後に擬陽性となったほか生育阻害も認められた。 3.降水中の農薬,変異原物質,基本的水質について季節変化特性を解明するため,1995年5月,7月,11月に調査を実施した。溶存態サンプルの場合,5月と11月に変異原性が認められたが,7月は豪雨による希釈効果などのため変異原性は陰性であった。代謝活性化により変異原性は弱まった。懸濁態サンプルでは陰性が多かった。変異原性の発現は多環芳香族炭化水素類によるものと考えられ,その解明は今後の課題である。 変異原性のある降水が流出・流下過程で変異原性陰性となる機構を解明するため,土壌吸着に関して実験的に検討した結果,土壌カラム流出水では変異原性が消失した。
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