【目的】セリンアセチル転移酵素(SATase)は、システイン生合成においてシステイン合成酵素(CSase)の基質である0-アセチルセリンの生成を行う酵素であり、生合成系全体の制御に関わっている。演者らは、既にホウレンソウのCSase cDNAのクローニングを行い、CSaseは、3つのアイソザイムとして細胞内に局在している事を明らかにした。そこでSATaseについても異なるオルガネラに局在するアイソザイムの可能性を考え、cDNAクローニングを行った。 【方法と結果】λgt10により作成したホウレンソウ緑葉cDNAライブラリーについて、スイカSATase cDNAをプローブとして16万クローンのスクリーニングを行った。その結果、6個の陽性クローンが得られ、これらはクロスハイブリダイゼイションによって4グループに分類された。そのうち最も強くスイカSATase cDNAとハイブリダイズするグループについて解析を進めた。その結果、このグループのクローンpSAT56のcDNAは、スイカSATase cDNAとの間にアミノ酸配列において73%の相同性が認められ、アセチル転移酵素に特徴的なアセチルCoAの結合部位と予想されるアミノ酸配列も保持されていた。また、別のグループに属すpSAT58について塩基配列を決定したところ、大腸菌など他生物のホスホセリンアミノ転移酵素(PSAM)とアミノ酸配列において約43%の相同性を示し、N末端にはオルガネラ輸送配列と推測される構造が見られた。さらに、PSAMに特徴的なアミノ酸配列も保持されていた。また、ノーザン分析により、pSAT58は、緑化体の根および黄化体で多く発現している事が明かとなった。現在これらについて、さらに解析を進めている。
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