タイ国伝承民間薬“Kratom"は、マレー半島全域に自生するアカネ科Mitragyna speciosaを基源植物とし、疲労回復やモルヒネ代用薬として用いられてきた。本研究ではMitragynine (MG)あるいは微量成分をリ-ド化合物として、薬理的評価を加えながら、有用化合物の検索を有機化学的手法を用いて行ない、以下の成果を得ることができた。 1。タイ産Mitragyna speciosa葉部含有アルカロイドの検索:同植物のメタノールエキスの精製を行い、主塩基としてMGを分離し、更に数種の微量塩基と共に、新化合物7-Hydroxy-mitragynineを単離構造決定できた。 2。主塩基MGの不斉全合成:酵素反応あるいはケトンの不斉還元によって得られた光学活性二級アルコールピリジン誘導体を出発原料として、集約的ルートによる光学活性なMG合成法を開拓することができた。 3。MGプソイドインドキシル及びオキシインドールの合成:MGの菌代謝産物として報告されたプソイドインドキシル体を化学的に合成した。本誘導体はMGに比べ、より強力な鎮痛活性を有することが明かとなったので、構造活性相関の観点から、MGオキシインドールも合成した。 4。マレーシア産Mitragyna speciosa葉部より得られている新規アルカロイドの化学的研究:マレーシア産同植物より、数種の新型インドールアルカロイドの分離が報告されている。これらのうち、ピリドン型ミトラガイナアルカロイドの合成研究を行い、その基本骨格の合成を達成できた。 薬理活性試験:上記で得られた化合物の生物活性試験が共同研究グループにより実施され、以下に示す作用が明らかになりつつある。MGが節後線維終末部のCaレセプターを阻害することによって、伝達物質の放出を抑制し、平滑筋収縮抑制効果を示す。MG pseudoindoxylはMorphineの50倍強力なオピオイド作用を持つ。更に、MGは中枢5-HT2受容体関連行動を抑制する。
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