研究概要 |
本年度はこれまでに以下の研究成果が得られた。 (1)アクチベータ-を除去したカルモデュリン依存性プロテインキナーゼIV(CaMキナーゼIV)の解析-従来の精製法を用いて得たCaMキナーゼIV標品をDEAE-NPR・HPLCカラムにかけたところ、酵素活性の著しい低下が見られた。この結果から、これまでのCaMキナーゼIV精製標品中に本酵素のアクチベータ-が共存していることが明らかになった。そこでHPLCで除去された画分の解析を行ったところ、酵素を活性化する蛋白(アクチベータ-)と活性に影響を与えない蛋白(CaMBP64)の2つを単離することができた。得られたアクチベータ-はCaMキナーゼIVをリン酸化して活性化するCaM依存性のプロテインキナーゼであることが判明した。以前の酵素標品で観察された自己リン酸化反応と、このアクチベータ-によるリン酸化反応との関連、ならびにそれぞれのリン酸化部位について現在解析を進めているところである。 (2)CaMキナーゼIV標品から単離されたCaMBP64の解析-従来の精製CaMキナーゼIV標品からHPLCカラムにより分離された蛋白質はSDS電気泳動上64kDaであり、CaM結合能を示すことから、CaMBP64と命名された。CaMBP64は、プロテインキナーゼ活性は示さず、またCaMキナーゼIVの抗体とも反応しなかった。ゲル濾過法とショ糖密度勾配遠心法から,ネイテイブ蛋白の分子量は130kDaであり、二量体蛋白の可能性が示唆された。また、CaMBP64はCaMキナーゼIIとcAMP依存性プロテインキナーゼの非常に良い基質になることが明らかになった。これらのプロテインキナーゼにより1分子あたり約1分子のリン酸が取り込まれるが、リン酸化に伴うCaM結合性の変化は見られなかった。次にCaMBP64に対する特異的抗体を作成し、ウエスタンブロッテイングを行ったところ、脳に特異的に存在する蛋白であることがわかった。脳内でも特に大脳皮質に豊富に存在しており、その含量は総蛋白質の約0.05%の含量を示した。ラットの成長過程においては、胎児脳や生後3日の脳には検出されず、生後2週間以後のラット脳に発現することも明らかになった。今後さらにCaMBP64の解析を進めてゆく予定である。
|