白血球細胞表面に存在する糖タンパク質CD45は、チロシンフォスファターゼ活性を有し白血球の増殖を制御すると共に、その糖鎖はB細胞表面の接着分子CD22のリガンドとして機能している。CD45のAsn型糖鎖の構造解析に続いてムチン型糖鎖の構造解析をしたところ、大半はコア1のGalβ1-3GalNAc_<OT>とコア2のGalβ1-4GlcNAcβ1-6(Galβ1-3)GalNAc_<OT>で、さらにこのコア1やコア2にN-アセチルラクトサミンが数回繰り返した糖鎖であると推定された。今後これらの推定構造を、メチル化分析等で確認する必要がある。CD45のムチン型糖鎖がi抗原やI抗原をもつことは、これらの抗原に対する抗体を用いた研究でその存在が示唆されていたが、今回の研究でこれらの抗原の存在がより一層明確になった。CD45はCD43と共に細胞表面の全シアル酸のキャリアーと考えられているが、静止期の白血球のCD45のムチン型糖鎖はその90%が中性で、残りの10%はシアル酸をもつ酸性糖鎖であった。 本研究により、ヒト末梢血白血球から精製したCD45のアスパラギン結合型糖鎖およびムチン型糖鎖は、いずれもシアリル化が低いことが判明した。従って、ヒト末梢血の白血球のCD45のアスパラギン結合型糖鎖の80%にシアル酸がα2-6結合で1-2分子結合していても、これらのシアル酸残基数ではCD22とと結合するのに十分でないことが示された。CD22はCD45分子上のシアル酸残基と結合することから、白血球は何らかの条件下(活性化など)で膜糖タンパク質のシアリル化が亢進し、CD22と結合するようになるものと推察され、今後こうした機構を解明してゆく。
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