研究概要 |
Asn-Gly結合において、アスパラギンが脱アミドするとともに,C末端側のグリシンとのペプチド結合がβカルボキシル基へ転位する反応は、従来水晶体・赤血球・硬組織など生合成されてから、長時間代謝されない蛋白質に見られる自発的で非酵素的な過程と考えられてきた。われわれは、ラット肝脂肪酸結合蛋白質のアラキドン酸を結合する分子種のAsn-Gly(105-106)にこの転位を見いだした。この蛋白質の半減期は三日程度であり、研究者によっては10倍に及ぶ日内変動があるとされている。このように活発に合成され、かつ分解されている蛋白質にこの種の修飾がみいだされたことは、これが生理的にも意義のあるプロセスであることを強く示唆している。また、細胞内ではこの修飾をなんらかの因子が加速しているはずである。本研究ではこの観点からこの修飾の生理的意義の解明とそれに関わる細胞内因子の検索を目的とした。まず蛋白質の内部で生じるこの結合の検出のためメチル化とLiBH4による還元でこれをisohomoserineとして同定する方法を開発した。またこの検出の高感度化のため、phenylisothiocyanteによる誘導体化を検討し一定の成果をえたが、更に分析条件を検討している。また、この蛋白質を細胞内因子検索のための基質とするため抗体を作成し、等電点電気泳動とウェスタンブロットの組み合わせによる検出方法を確立し、実際に細胞質画分に応用した。また、別の修飾された脂肪酸結合蛋白の分子種を見いだし、その修飾の本体を明らかにすると共に今回の修飾との機能的関連を検討した。
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