研究概要 |
APIとTLCKとの複合体の立体構造から、基質リジン側鎖のε-アミノ基との水素結合可能な残基、Thr189とSer214に的を絞り、部位特異的変異により水素結合を形成できない変異体を作製し、APIのリジン特異性に対する水素結合の重要性を検討した。作製した変異体はThr189をVdlに置換した[T189V]、Ser214をAlaに置換した[S214A]、そして両変異を合わせ持った[T189V,S214A]の3種類である。Boc-Vdl-Leu-Lys-MCA基質に対する動力学定数を求めたところ、3種類の変異体のKcat値は野生型と殆ど変わらず,Km値はシングル変異体で約10倍、ダブル変異体で約100倍増加した。またTLCK、DFP、PMSFに対する阻害実験からも3種類の変異体は、catalytic triadを中心とした触媒部位の機能は野生型と変化なく、基質結合部位の基質結合能の低下のみ観察された。以上の結果、Thr189とSer214が基質リジン側鎖と形成する水素結合の基質結合能における役割の定量的評価に成功した。
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