輸送小胞形成に必須の複合タンパク質、coatomerのサブユシットのうち、ε-COPについて以下のことを行なった。 1.ε-COPのcDNAクローニング:牛肝臓より精製したcoatomerをSDS-PAGEにかけ、各サブユニットに分離した後、ε-COP部分から部分的にペプチドのアミノ酸配列を決定し、PCRに用いるプライマーをデザインした。牛肝臓cDNAライブラリーをテンプレートにしてPCR法で特異的なDNAフラグメントをサブクローニングし、これをプローブとして牛肝臓cDNAライブラリーより目的のcDNAをスクリーニングし、cDNAの配列を決定した。 2.抗ε-COPポリクローナル抗体の作製:ヒスチジンがニッケルに結合する性質を利用して、クローニングしたε-COPのcDNAにヒスチジン6個をN-末端側に付加したものを大腸菌に発現し、ニッケルカラムを用いて精製した。これを抗原としてウサギに免疫し、血清よりアフィニティークロマトグラフィーを用いて抗体を精製した。 3.抗e-COPポリクローナル抗体の特性解析:抗ε-COPポリクローナル抗体を用いて、ε-COPが輸送小胞上に存在することを明らかにした。また、細胞質中における局在を調べた結果、ε-COPはcoatomerとしてのみ存在し、細胞質中に他のε-COPのプールは存在しなかった。 4.ラジオラベルcoatomerの分離:クローニングしたε-COPのcDNAにヒスチジン6個をN-末端側に付加したものを哺乳動物細胞の発現系に導入し、e-COPを大量発現する形質転換CHO細胞をクローニングした。この細胞を大量培養し、メタボリックラベルした後、ニッケルカラムを利用してcoatomerの精製を行なった。 5.ラジオラベルcoatomerを用いた輸送小胞の分離:ラジオラベルcoatomerをゴルジ膜とARFと共にインキュベーションし、蔗糖密度勾配遠心分離法で輸送小胞を分離することに成功した。
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