1.coatomerの各サブユニットの動向 平成6年度に得られた[^<35>S]coatomerとゴルジ膜を用いてCOP被覆小胞を無細胞系で調製したところ、すべての[^<35>S]coatomerサブユニットがCOP被覆小胞に組み込まれた。さらにCOP被覆小胞上の[^<35>S]coatomerの各サブユニットタンパク質の比率は、被覆小無標識のcoatomer存在下と非存在下に調製を行っても同じであり、遊離の[^<35>S]coatomerのサブユニットの比率とほぼ同様であった。したがってcoatomerの各サブユニットはCOP被覆小胞のコートタンパク質(COPs)と同一のタンパク質であることが明白となり、coatomerはサブユニットの交換を行なわずに1つの単位としてまるごとCOP被覆小胞に組み込まれることが示された。したがってCOP被覆小胞の形成には、細胞質に存在するcoatomerがゴルジ膜へ結合することが必要であると推察された。 2.ζ-COPのcDNAクローニングと細胞内における局在 牛肝臓のζ-COP部分のアミノ酸配列を決定し、その配列を利用してζ-COPcDNAを牛肝臓cDNAライブラリーから分離した。ホモロジー検索を行なった結果、ζ-COPはクラスリンアダプター複合体のサブユニット、AP17およびAP19にアミノ酸配列上で類似性を有することが明かとなった。したがってCOP被覆小胞とクラスリン被覆小胞の形成機構と機能が互いに類似している可能性が考えられた。また抗ζ-COP抗体を用いてζ-COPの細胞内の局在を調べた。ζ-COPはβ-COPやε-COPと同じくCOP被覆小胞上に存在するとともにcoatomerに組み込まれたものと遊離のものが細胞質に存在することが示された。 3.小胞輸送におけるζ-COPの機能解析 抗ζ-COP抗体は、coatomerのゴルジ膜への結合を阻害した。したがってζ-COPはCOP被覆小胞の形成に必要なサブユニットの1つであると考えられる。
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