マウス肝よりゴルジ画分を調製し、界面活性剤処理により可溶化酵素を得た。可溶化酵素を基質アフィニティー・カラムにて部分精製した。酵素はホモジネートから約千倍精製されたが、電気泳動上では多数の夾雑蛋白が検出されており、完全精製には至っていない。ラクトシルセラミドの糖鎖部分はラクトースと全く同じ構造であり、両者ともにラクトース合成酵素によって生合成されると考えられていた。しかし、ラクトース合成酵素を強く吸着するα-ラクトアルブミン・カラムは、部分精製されたラクトシルセラミド合成酵素を吸着せず、両酵素は全く別物であることが確認された。またChatterjeeらは、ラクトシルセラミド合成酵素が0.8nmol/min/mg proteinの比活性を持ち、338μg/g組織重量の含有量を示すと報告した。しかし、これは精製が不十分なため、見かけ上著しく低い比活性と高い含有量を示したと考えられる。本研究によって、本酵素は少なくとも11nmol/min/mg protein以上の比活性を持つ含有量の少ない酵素であることが示された。 得られた部分精製標品を出発材料としてラクトシルセラミド合成酵素の完全精製を行なう予定である。本酵素は、糖供与体であるUDP-ガラクトースから脂質受容体であるグルコシルセラミドへのガラクトースの転移反応を触媒する。UDP-ガラクツロン酸をアミノヘキシル・セファロースにカルボジイミドで結合させた担体は、UDP-ガラクトース分子全体が固定化された構造を持ち、酵素に強い親和性を示すと予想される。このアフィニティー担体を用いて酵素の精製を行なう。さらに得られた精製酵素を用いてcDNAクローニングを行なう。
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