cdk5はcdc2関連キナーゼの一つである。他の全てのcdc2関連キナーゼが細胞増殖の進行に関わっているのに対して、cdk5は最終分化し、分裂しない神経細胞で機能していると考えられている。神経細胞内でcdk5がどのような役割をしているのか、また、どのようにして活性化されているかは、非常に重要な問題である。すでに、我々は神経細胞内におけるcdk5の基質はニューロフィラメントのHサブユニット(NF-H)やタウ蛋白であることなどを報告してきた。今年度は、NF-Hキナーゼとして精製したcdk5の酵素的性質をcdc2キナーゼと比較し、また、活性化機構について検討した。cdk5はニューロフィラメント蛋白、微小管結合蛋白やRbがん抑制遺伝子産物などをcdc2キナーゼと同様よくリン酸化した。しかし、リン酸化の程度はcdc2キナーゼより低く、cdc2キナーゼより基質特異性が厳しいことが示唆された。cdk5はcdc2キナーゼの特異的阻害剤であるブチロラクトン1によってcdc2キナーゼと同程度の濃度で阻害された。しかし、cdc2キナーゼに強く結合するsuc1蛋白とはcdk5は結合しなかった。Xenopus卵抽出液を用いて分裂中期促進因子(MPF)活性を調べたところ、cdk5はcdc2キナーゼとよく似た酵素的性質を示すにも関わらず、MPF活性を示さなかった。精製したcdk5には26kDaの活性化サブユニットが結合していた。これは本来35kDaであったものが精製過程で分解されたものである。脳抽出液中のcdk5と35k制御サブユニットはフリーで存在しているものがかなりあった。今後は、それらがどのように結合するかを明らかにし、cdk5の活性化機構を解明していきたいと考えている。
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