本年度は、他の転写調節因子に及ぼすビタミンB6の効果を検討するとともに、HNF1の大腸菌における大量発現系を開発して、精製組換えHNF1のDNAへの結合に及ぼすB6の効果を検討した。 1ビタミンB6による転写調節因子のDNA結合抑制が、HNF1やC/EBPのみならず、他の転写調節因子にもみられることを、HNF3、HNF4、NFYならびにSP1について明らかにした。 2HNF1の大腸菌における大量発現系を構築し、遺伝子組換えHNF1を大量に得た。 3遺伝子組換えHNF1のDNA結合活性について検討した結果、結合反応は短時間のうちにおこり、非標識オリゴヌクレオチドを反応系に加えるによって結合が抑制されることならびに抗HNF1抗体によってスパーシフトが観察されることから遺伝子組換えHNF1のDNAへの結合は特異的であることを明らかにした。 4種々のビタミンB6誘導体による遺伝子組換えHNF1のDNA結合抑制について検討した結果、ピリドキサールリン酸(PLP)のみが特異的に抑制した。このことは、PLPがシッフベースを介してHNF1のリジン残基に結合していることを示唆している。 5遺伝子組換えHNF1のDNA結合を50%抑制するPLPの濃度は150μMであった。 6PLPによる遺伝子組換えHNF1のDNA結合抑制は、反応液中にアミノ酸であるリジンを加えると解除されることから可逆的であることが示唆された。
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