研究概要 |
1 細胞の分化、増殖におけるジアシルグリセロール(DG)キナーゼの役割検討……HL60細胞を用いて分化誘導物質であるTPA,DMSO,レチノール酸を用いて細胞を分化させた後、抗80kDaDGキナーゼ(DGKα)抗体との反応によりDGK量の分化における変動を検討したところ、TPAおよびレチノール酸処理によりDGKαおよび90kDaDGキナーゼ(DGKγ)の増加が観察された。さらにmRNA発現量の検討を行なっている。 2 免疫担当細胞におけるDGKアイソザイムの役割の検討……ヒトTリンパ球系培養細胞であるJurkat細胞とLKT9細胞(EBV transformed B cell)を用いて、実験を行った。現在LKT9細胞に大量にDGKγが発現していることがわかった。今後LKT9細胞を用いて抗体で刺激したときのこれらアイソザイムの変化を観察する。 3 DGKαの細胞内大量発現による機能の解析……繊維芽細胞(NIH3T3)を用い、DGKcDNAを導入し、DGKを大量に発現する細胞を確立した。この細胞は増殖の速度が早かった。さらに32P標識細胞をPGDF等で刺激して内因性DGのホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸への変換、DG量の変化を観察した。また酵素の活性化機構の一つと考えられるトランスロケーションをラット胸腺細胞を用いて検討した。 DGKのEF-handの機能解析……先に著者らはDGKαのEF-handにCa^<2+>が結合しそのことにより活性が調節されていることを示したが(JBC 266 7096,1991)、DGKγはEF-hand構造を持つにもかかわらず通常のアッセイ系ではCa^<2+>の影響を受けなかった。EF-hand構造を持つ三つのアイソザイム、DGKα,β,γのEF-hand部分を発現してCa^<2+>の結合能の差、結合することによる立体構造の変化を検討した。いづれのアイソザイムもCa^<2+>を結合したがその結合能には著しい差があった。またCa^<2+>結合による立体構造の変化が観察された。今後EF-handの分子内相互作用、Ca^<2+>結合による構造変化の解析を行う予定である。
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