ポリアミン合成の鍵酵素であるオルニチン脱炭酸酵素(ODC)はポリアミンで誘導される調節蛋白質アンチザイム(AZ)の結合によって不安定化され、26Sプロテアソームによって分解されるが、第2の調節蛋白質と目されるアンチザイムインヒビター(AI)はODC以上の親和性でAZと結合し、その作用を阻害する。本研究ではAIの本態と役割を明らかにするとともに、ユニークなODC分解制御系の分子進化を検討した。 1.AIcDNAをラット心臓より単離し、塩基配列を解析した結果、AIは448個のアミノ酸より成るポリペプチド(サブユニット)で、ラットODCと47.5%の相同性を有し、AZ結合部位は63%の相同性を示した。しかし、ODC分解に必須のC末端領域に該当する領域はなく、PEST領域も含まれていなかった。これらの結果から、AIはODCに類似しているがODCの翻訳後修飾産物ではなく、明確に異なる蛋白質であると結論した。 2.トランスフェクションによるAIの役割の検討は現在実施中であるが未だ結論を得ていない。 3.ODCの分解制御系の存在をすでに報告しているカエルのAZcDNAを単離し、塩基配列を解析した。その結果、カエルAZcDNAは99bpの長さを持ちラットAZcDNAと65%の相同性を示した。またラットの場合と同様に+1の翻訳フレームシフトを必要とする配列であった。テトラヒメナ(原虫)ではポリアミンがODCを抑制するが分解促進はみとめられず、AZのような阻害蛋白質も検出されなかった。
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