研究概要 |
(1)我々はヒトの肝臓のミクロゾームがロイコトリエンB4のω水酸化反応を活発に触媒することを初めて見いだした。この活性は,ウサギのプロスタグランジン及び脂肪酸ω水酸化酵素(チトクロームP-4504A)に対する抗体によって阻害されなかった。次にヒトの肝臓のcDNAライブラリーより,ヒト好中球のロイコトリエンB4ω水酸化酵素(チトクロームP-4504F3)のcDNAをプローブとしてcDNAクローニングを行なって,ヒト肝のロイコトリエンB4ω水酸化酵素の一次構造を決定した。cDNAより推定される蛋白質の分子量は59,853で,520のアミノ酸残基よりなる。本酵素の全アミノ酸配列はP450F3のそれと87.3%の相同性を示した。このcDNAを用いて酵母に発現させたところ,酵母ミクロゾーンはロイコトリエンB4のω水酸化反応を活発に触媒し,44.8μMのKm値を示した。可溶化ミクロゾームの活性にはNADPH-チトクロームP-450還元酵素の存在が不可欠で,さらに最大活性にはチトクロームb_5の添加が必要であった。 (2)ヒトの肝ミクロゾームより,脂肪酸ω水酸化酵素(P450HLω)を均一に精製した。さらにヒトの肝cDNAライブラリーより,ウサギの脂肪酸ω水酸化酵素(P4504A5)のcDNAをプローブとして,ヒト肝の脂肪酸ω水酸化酵素のcDNAを単離した。このcDNAは519のアミノ酸からなる分子量59.347の蛋白質をコードしている。酵母に発現させた蛋白質はP450HLωと同一の見かけの分子量を示し,種々の脂肪酸を触媒することが明かとなった。
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