これまでの研究で、12種の哺乳類及びニワトリ由来IgGのアスパラギン結合糖鎖の構造を明らかにした。これらIgG上の特定の糖鎖構造がリウマチ因子のエピトープとなる可能性を調べるため、これらのIgGをコートしたELISAプレートに、リウマチ因子陽性血清を加え、各動物IgGと結合する免疫グロブリン分子(リウマチ因子)を標識抗体を用いて検出した。その結果: 1)ヒトIgGと結合し、免疫複合体を形成することが知られるリウマチ因子は、ヒトのみならず、種々の哺乳類由来のIgGにも結合し、その結合親和性は種間で有意に異なることが判明した。 2)IgMクラス-リウマチ因子の各種動物IgGに対する親和性は、これらIgGに共有結合しているアスパラギン結合糖鎖の特定の構造の存在割合とは有意な相関性は無く、IgMクラス-リウマチ因子はIgGのタンパク質部分を認識して結合することが示唆された。 3)IgMクラス-リウマチ因子とこれら動物IgGとの結合は、微生物由来のIgG結合分子として知られるプロテインAの添加により競合阻害された。このことからIgMクラス-リウマチ因子のIgG分子に対する結合部位はプロテインAのそれと同一か、あるいは近傍にあることが示唆された(Comp.Biochem.Biophys.〔1995〕accepted)。 4)IgGクラス-リウマチ因子の各種動物IgGに対する結合親和性はIgMクラス-リウマチ因子のそれとは異なっており、両クラスのリウマチ因子は、それぞれIgG分子上の異なる部位を抗原エピトープとしていることが考えられた。
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