アンバーナンセンス変異によって出現する制限酵素認識配列(CATG)を利用した組換えによって、βサブユニット遺伝子の内部欠失変異体4種類を作成した。プラスミドの置き換えを利用する遺伝子学手法によってこれら変異遺伝子の機能性を検討したところ、4種類すべて致死的であった。しかしながら、細胞粗抽出液を密度勾配遠心法および免疫沈降法で分析したところ、N末端近傍に欠失を持つ2つの変異体では、正常なサブユニット集合が認められた。さらに、染色体上のrif-r(リファンピシン抵抗性)に対して優性なrif-s(リファンピシン感受性)を示す性質から、残りのうち1種類の欠失変異はin vivoで弱いながら機能している可能性が示唆された。 大腸菌の緊縮制御のメディエーターであるグアノシン四リン酸(ppGpp)は、遺伝学的な解析、in vivo転写反応、蛍光誘導体の結合実験などから、RNAポリメラーゼを直接のターゲットとすることが示唆されている。遺伝学的な解析からはβサブユニットの関与が示唆されているものの、直接的な証明はない。そこで、RelAの酵素反応を利用してppGppの光感受性誘導体(8-azido-[^<32>P]ppGpp)を合成し、精製したRNAポリメラーゼホロ酵素を用いて光親和性標識を行なった。低濃度(数μM)の標識試薬を用いた場合にβサブユニットが特異的に標識されることがわかった。この標識反応はppGppによって拮抗を受けること、標識試薬はppGppと同様に緊縮プロモーターからのin vitro転写反応を阻害することなどから、βサブユニット上にppGppの特異的な結合部位が存在することが強く示唆された。現在、βサブユニット上の結合位置を特定するために、プロテアーゼ分解等による検討を行なっている。
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