研究概要 |
前年度までに、ヒトトリプトファン代謝酵素(IDO)遺伝子を単離し、転写開始点から約0.5kb上流にIFN-stimulated response element(ISRE)とX-box様配列が存在し、その配列にIFN-γに応答するプロモーター活性のあることを明らかにしてきた。また、mRNAの合成誘導が蛋白質合成阻害剤で阻害されることから、本酵素誘導にはde novoの蛋白合成が必要であること、そしてその蛋白合成は、IFN-γ添加から3時間以内に起こっていることを見いだしてきた。さらにチロシンキナーゼ阻害剤であるherbimycin AやgenisteinでIDOmRNA発現が完全に阻害されることからある種のチロシンキナーゼが関与していることも明らかにしてきた。 本年度は、前年度から引き続きこの転写制御領域に結合する蛋白因子の検索をIFN-γで最も高いIDO誘導の見られたヒト胎児由来の線維芽細胞(HEL細胞)の核抽出液中にgel retardation法及びDNase I foot printing法により行なった。しかしながら、何れの方法についても未だ特異的因子の存在を確認するには至っていない。現在、IFN-γ処理でIDOのmRNA合成に先行して速やかに合成される蛋白質の関与を考慮して、IFN-γ添加直後から経時的に細胞抽出液を調製して検討を加えている。一方最近、Hipple Cancer Research Center(米国、オハイオ州)のGuptaらは、IDOの発現にSTAT1とIRF-1の関与をsuper-shift法で示唆している〔J. Interferon Cytokine Res, 15,517-526(1995)〕。現在、これらの因子がIDO誘導に必須であるか否かをそれぞれの遺伝子欠損マウスで検討中である。
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