研究課題/領域番号 |
06680638
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研究機関 | (財)東京都神経科学総合研究所 |
研究代表者 |
中田 裕康 (財)東京都神経科学総合研究所, 神経生化学, 副参事研究員 (00041830)
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研究分担者 |
斉藤 佳子 (財)東京都神経科学総合研究所, 神経生化学研究部門, 主事研究員 (70241263)
斉藤 修 (財)東京都神経科学総合研究所, 神経生化学研究部門, 主事研究員 (60241262)
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キーワード | アデノシン / プリン受容体 / 情報伝達 / 細胞培養 / ATP / リン酸化 |
研究概要 |
細胞の情報伝達機構において、細胞膜に存在する受容体は外界の情報を最初に受取り、それを細胞内に伝えるという非常に大切な役割を果たしている。アデノシン受容体はそのなかでも多様な生理・薬理作用を広範囲の細胞や組織で示すことで特徴的である。とりわけ神経シナプスにおける神経伝達物質の遊離を阻害して神経興奮を抑えることから、神経活動の調節に密接に関与していると考えられ、その詳細な機構を明らかにすることは重要である。6年度はアデノシン受容体を比較的多く発現するガン化培養細胞やアデノシン受容体cDNA強制発現細胞などをモデル系として用い、種々の生理的刺激に伴うアデノシン受容体自身の発現変化をタンパク及び遺伝子レベルで解析することを試みた。まず、A2aアデノシン受容体を発現するPC12細胞を用いてアゴニスト刺激によるアデノシン受容体の変動をリガンド結合活性とノーザンブロットによるmRNA定量によって検討した。その結果、短時間のアゴニスト刺激で受容体mRNA量は急速に減少するが、徐々に回復して約30時間後にもとのレベルに達すること、リガンド結合活性もほぼ並行した変化を示すことを明らかにした。ついでA1受容体を発現するDDT_1MF-2細胞をホルモン(デキサメサゾン)処理したところ、ゆっくりと(1-2日)A1受容体の活性が上昇して約2倍にもなること、このときA1受容体mRNA量も増加傾向にあることを見いだした。これらの結果はmRNAの発現変化と受容体活性変化が密接に関連していることを示唆している。しかし受容体自身の酵素的修飾によっても活性化がおこっている可能性があるため以前に調製した精製A1アデノシン受容体に対する抗体で免疫沈降実験を行い、修飾の有無を調べたが、使用した抗体の非特異的結合が強く、受容体の修飾を確認するまでには至らなかった。この目的に適した特異性の高い抗体を得るため現在モノクローナル抗体の作成をおこなっている。 このように、受容体をアゴニストもしくはホルモンで刺激した際、アデノシン受容体の発現が細胞レベルでどのように影響を受けるかを4種のアデノシン受容体サブタイプの内、A2a受容体は迅速なダウンレギュレーションを受けること、A1受容体はゆっくりとしたアップレギュレーションを受けることが明らかになった。これらがいずれもmRNAのレベルで観察されたことはこの研究が最初の例である。アゴニストによる調節が示されたことはアデノシン受容体、少なくともA2a受容体においてはオートレギュレーション機構の存在を示唆しておりアデノシン受容体の生理的役割を考える上で興味深い。この結果をふまえて、他のサブタイプのアデノシン受容体で同様の調節機構が存在するかを明らかにする必然性が強くなったといえる。勿論、他の受容体で報告されているようなコバレントな受容体の修飾が同時に生ずる可能性もあり、特異性の高い抗体を次年度に作成して、明らかにしていきたい。
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