G蛋白質はα、β、γの3つのサブユニットから成り、それぞれのサブユニットには多数の分子種が存在する。私達はγサブユニットの分子多様性の生理的意義を明らかにすることを目的として研究を進め、下記のような成果を得た。 私達がウシ脾臓より精製した新奇のγ(γ_<S1>と呼んでいたが今回γ_<12>と命名した)はこれまで部分アミノ酸配列しか判明していなかった。。今回、γをプロテアーゼで消化し、その消化断片のアミノ酸配列をエドマン分解およびcapillaryLC/MSで解析することにより一次構造を決定した。N末端はアセチル化され、C末端はゲラニルゲラニル化およびカルボキシメチル化されていた。さらに、ウシ脾臓cDNAライブラリーよりγ_<12>のcDNAをクローニングしたところ、その塩基配列から予想されるアミノ酸配列はγ_<12>蛋白質から得られた配列と完全に一致した。5種類のγの異なるβγ複合体についてプロテインキナーゼCによるリン酸化を行ったところ、βγ_<12>のγのみがリン酸化された。リン酸化部位はN末端から1または2番目のセリンのどちらかと考えられる。主要なγとしてγ_<12>を含む線維芽細胞Swiss3T3や初代培養のラット血管平滑筋細胞を種々の活性化物質で処理するとγ_<12>のリン酸化がみられたことより、γ_<12>のリン酸化が生理的条件下でも起こり得ることが示唆された。また、γ_<12>は他のγとは異なる調節を受けているのではないかと考えられる。各種γに対する抗体を作製し、その組織分布をラットを用いて検討したところ、γ_3は脳に特異的であったが、他のγは多くの組織に存在していた。しかし、γ_2とγ_7は神経系に非常に高く、一方、γ_<12>はほとんどの非神経系の組織の主要なγであった。このように、神経組織と非神経組織では、γの分布が異なっており、γの機能的な差異を示唆していると考えられる。
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