研究概要 |
G蛋白質を介した情報伝達の詳細な機構を解明するために、G蛋白質とレセプター様ぺプチドとの相互作用を物理化学的に解析して、以下の成果が得られた。 1.G蛋白質αサブユニットの発現: リコンビナントGil αととそのmutant簡便に発現・精製する系を作成した。histidine-tagをGil αのN末端に付加しNi^<2+>アフィニティークロマトグラフィーで精製することによって、50mg/L以上の高収率でGil αが発現精製できるようになった。また、重水素化したGil αもこの系で調整できた。さらに、Gs αのunc mutantに相当するK349P-Gil αも精製できた。このmutantは予想通り、レセプター様刺激によって活性化されなかった。また、Go αを発現する系も同様に作成できた。Gs αの発現系は改良中である。 2.ぺプチドの発現と安定同位体ラベル: レセプター様ぺプチドとG蛋白質との相互作用を詳細に解析するために、βレセプター部分ぺプチドやマストパランXをユビキチンとの融合蛋白質として発現し^<13>Cや^<15>Nでラベルする系を作成した。 3.Gil αに結合したマストパランXの立体構造: ^<15>Nまたは^<15>Nと^<13>Cで一様にラベルしたマストパランXとGil αとの相互作用を3次元多核(^<15>N,^<13>C)編集TRNOEで解析することによって、主鎖のrmsdが0.33Åという非常に精密な構造が得られた。マストパランXはGil αに結合した時、3残基目からC末端までαヘリックスを形成していることがわかった。 4.レセプター刺激がG蛋白質のGDP放出を促進するメカニズムを解明するために、レセプターミメティックがGil αの2次構造に及ぼす影響をCDで解析した。GDP放出促進に伴って、Gil αのαヘリックス含量が低下することがわかった。
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