研究概要 |
本年度得られた成果と研究の現状について簡単にまとめる。 1:G蛋白質遺伝子の全長のクローニング;ミズダコの眼のcDNAライブラリーの提案されたものがあったので、それを使ってクローニングすべく試みたが、全長を含むクローンは得られてこなかった。それで、新たにタコの眼のcDNAライブラリーを構築した。現在それを使ってポジティブクローンを得たので、解析を進めている。 2:ノーザンブロットにる発現部位の検討;Gi,Go,Gqについて得られた遺伝子断片(700bp)を用いてタコの異なる組織における発現を調べるためにノーザンブロットを行った。その結果、Gqが眼で非常に強く発現していることが判った。ショウジョウバエではGqクラス蛋白質が眼で特異的に発現していることが報告されている。タコでも同様にGqクラスの遺伝子が眼で強く発現していることが示され、無脊椎動物での光情報伝達経路が脊椎動物とは異なったG蛋白質と共役する形で進化してきたことを示唆する結果を得た。Goクラスについては、視葉と脳のみにバンドが観察された。ほとんど中枢神経系のみでGoが発現されていることは脊椎動物の場合と同じであり、Go蛋白質の機能が両者で共通していることを示唆している。 3:βサブユニット遺伝子;タコの網膜と視葉とを各々材料として、イカのβサブユニットのアミノ酸配列を基にして合成したプライマーを用いてPCRを行い、目的サイズのものについて解析した。90bpのPCR断片を計100個のコロニーについて調べたところ、得られてきたβサブユニット遺伝子は一種類であった。次に、得られた720bpの断片をプローブとしてノーザンブロットを行ったところ、調べた全ての組織で2本のバンドが検出された。今後はこの2本のバンドについて、その由来を調べていく計画である。
|