ウシ肺より可溶性グアニル酸シクラーゼを高度に精製し、以下の事柄を明らかにした。 1.イオン交換、アフィニティー、ゲルろ過クロマトグラフィーにより、8kgの肺から約15mgの精製酵素を得ることができた。精製度は約3800倍で、その収量は10%であった。 2.精製酵素はSDS電気泳動で単一のバンドを示し、その分子量は72kDaであった。SDS非存在下での分子量が145kDaであることから、本酵素は2個のサブユニットからなる。現在、本酵素がヘテロあるいはホモダイマーであるのかを二次元電気泳動で検討中である。また、精製酵素のヘム含量は、1モル/1モル酵素(145kDa)であった。 3.ヘムの配位構造は、還元型、酸化型において5配位高スピン型であり、一酸化炭素(CO)複合体では6配位低スピン型、一酸化窒素(NO)複合体では他のヘム蛋白質とは異なり5配位型であった。また、5配位型NO複合体の生成は、6配位低スピン型の中間体を経て生成することを初めて確認した。 4.シクラーゼ活性は、5配位型NO複合体の形成により100倍活性化されるが、CO型ではこのような著しい活性化は見られない。また、酸化型酵素も不活性であった。 以上のことから、本酵素のシクラーゼ反応部位の活性化は5配位型NO複合体の形成と密接に関係しており、その配位構造から考えてNOがヘムに結合することによりヘム鉄と内在性配位子との間の結合が切断され、その結果シクラーゼ部位が活性化をうけるものと推定される。現在、新たに発見された6配位型NO複合体が活性であるのか否かを検討中である。
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