ウシ肺より可溶性グアニル酸シクラーゼを高度に精製し、以下の事柄を明かにした。 1.精製酵素はSDS電気泳動で分子量の異なる二種類のバンドを示し、本酵素はヘテロダイマー構造であるが確認された。また、本酵素のヘム含量は、1モルヘム/1モル酵素であった。 2.電子スピン共鳴法により、酸化型酵素は5配位高スピン型、酸化型CN複合体は6配位低スピン型、還元型一酸化窒素(NO)複合体は5配位型であることを確認した。 3.一酸化炭素(CO)の還元型酵素への結合速度定数は3.4x10^4M^<-1>sec^<-1>、解離速度定数は14sec^<-1>であった。これらの値より計算した解離定数は0.4mMであり、非常に親和性が悪い。これらの結果から、COがグアニル酸シクラーゼを介した情報伝達系における情報伝達物質である可能性は否定された。 4.NOと還元型酵素の結合は非常に速く、結合速度定数は1x10^7M^<-1>sec^<-1>以上である。この結合過程において新しい分子種の生成が見出された。この分子種は、電子スピン共鳴法により還元型6配位NO複合体であることが確認され、また第五配位座アミノ酸残基はヒスチジン残基と推定された。したがって、5配位型NO複合体は6配位型NO複合体の分解により生じることが判明した。 これらの結果より、NOによるグアニル酸シクラーゼの活性化は、最初にヘム鉄の第六配位座にNOが結合し、その後ヘム鉄と第五配位座アミノ酸残基との結合が切断されて活性な5配位型NO複合体が生成するものと結論された。
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