ウシ肺より可溶性グアニル酸シクラーゼを高度に精製し、以下の事柄を明かにした。 1.本酵素は、ヘテロダイマーであり、酵素1分子あたり1分子のヘムをもつ。 2.一酸化窒素(NO)によりシクラーゼ活性は120倍増加するが、一酸化炭素では5倍活性化されるのみである。 3.本酵素の酸化型は5配位高スピン型、青酸複合体は6配位低スピン型であることが、電子常磁性共鳴法により確認された。 4.本酵素の還元型は5配位高スピン型であり、また、一酸化窒素(NO)複合体も5配位高スピン型である。したがって、一酸化窒素の結合にともない、ヘム鉄‐アミノ酸配位子の結合が切断されて5配位高スピン型に変換するものと結論された。 5.5配位型NO複合体は、還元型とNOとの直接的な反応から生じるのではなく、その中間に6配位型NO複合体が生成することが電子常磁性共鳴法により証明された。また、この結果は、第五配位座アミノ酸がヒスチジン残基であることを強く示唆する。 6.6配位型NO複合体の生成は極めて速く、その速度定数は10^7M^<-1>sec^<-1>以上である。一方、一酸化炭素と還元型の結合速度は極めて遅く、3.4x10^3M^<-1>sec^<-1>である。また、本酵素は、酸素とはまったく反応しない。 以上の結果より、NOによるグアニル酸シクラーゼの活性化は、最初にヘム鉄の第六配位座にNOが結合し、その後ヘム鉄と第五配位座アミノ酸との結合が切断されて活性な5配位型NO複合体が生成するものと結論された。また、6の結果は、一酸化炭素あるいは酸素が存在しても、本酵素は一酸化窒素により特異的に活性化されることを示している。
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