スイッチ蛋白質と他の蛋白質との相互作用を解析するためにはスイッチ蛋白質を変性していない状態で精製することが重要である。FliMは大量生産した際に凝集体を形成してしまい、これを可溶化するために蛋白質を尿素、塩酸グアニジンなどで変性させることが必要となった。ところが、従来の方法で可溶化の後に回収すると再び凝集体を形成してしまい、変性していない状態で精製することができなかった。そこで、FliMを含む凝集体を尿素で可溶化した後にすばやく透析して尿素を除く方法を試みたところ、この方法では尿素除去後もFliMは凝集体を形成しないことがわかった。これにより、水溶液中での相互作用の解析が容易になったばかりでなく、結晶化やNMR法による解析の可能性がでてきた。また、精製したFliMを中性pHで静置しておくとオリゴマーを形成することも明かとなった。一方、FliMと走化性信号蛋白質であるCheYとの相互作用についてはイスラエルのワイツマン研究所のM.Eisenbachとの共同研究により、その性質についてのより細かな解析を行った。FliGやFliNの他のスイッチ蛋白質についても水溶液中での挙動を様々なpHにおいて解析すると共に、べん毛基部体のMSリング構造体との相互作用の解析についても報告を行った。スイッチ蛋白質と相互作用すると思われるモット蛋白質についてはその大量生産系の確立のために現在プラスミドの作製を行っているところであり、来年度にはその精製法の検討を行う予定である。
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