スイッチ蛋白質と他の蛋白質との相互作用を解析するためにはスイッチ蛋白質を変性していない状態で精製することが重要である。FliMは大量生産した際に凝集体を形成し、従来の方法で塩酸グアニジンや尿素などで可溶化の後に回収しても再び凝集体を形成してしまい、変性していない状態で精製することができなかった。そこで、凝集体を尿素で可溶化後にすばやく透析して尿素を除くと、尿素除去後もFliMは凝集体を形成しないことがわかった。これにより、水溶液中での相互作用の解析が容易になったばかりでなく、結晶化やNMR法による解析の可能性がでてきた。また、精製したFliMをを中性pHで静置しておくとオリゴマーを形成することも明かとなった。一方、FliMと走化性信号蛋白質であるCheYとの相互作用についてはイスラエルのワイツマン研究所のM.Eisenbachとの共同研究により、その性質についてのより細かな解析を行った。FliNについては比較的容易に大量かつ純度の高い試料を得ることができるので、国立遺伝学研究所の白木原助教授との共同研究によって、その結晶化条件の検討を行うことにより擬結晶を得ることができた。今後はこの系をさらに発展させることにより、FliNタンパク質のX線による構造解析を行う予定である。スイッチタンパク質と他のタンパク質の相互作用については、特にMSリング構造体との相互作用を、急速凍結ディープエッチング法を用いて電子顕微鏡によりその構造を解析すると共に、原子間力顕微鏡を用いてその力学的性質の解析を行った。電子顕微鏡による構造解析については、帝京大学理工学部の相沢助教授と東京大学医科学研究所の片山助教授との共同研究により、MSリング構造体の細胞質側に存在するスイッチタンパク質が形成していると思われる構造を立体的に観察した。一方、原子間力顕微鏡による観察では名古屋大学工学部の栗原助教授との共同研究により、MSリング構造体のみとMSリング構造体にスイッチタンパク質のうちのFliGが結合したものの間での力学的性質の違いを明かにした。
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