研究概要 |
酵母S.cerevisiaeのINO1やITR1遺伝子はイノシトールによって顕著に転写調節を受ける。ire15変異株はこれらの遺伝子の発現に欠損を持ち、イノシトール要求性を示すことがわかっている。既に我々はこのire15変異株を用いて、そのイノシトール要求性を相補する酵母遺伝子を6種類、さらにヒトcDNAを3種類単離している。ヒトのcDNAとしては、TGF-β受容体、プロテインホスファターゼ2AサブユニットA、プロテインキナーゼの調節因子として知られている14-3-3蛋白の遺伝子がある。今回新たに新規のヒトcDNAがire15変異を相補することを見いだした。この遺伝子HCP1は360アミノ酸からなる推定分子量40,515の蛋白をコードする。酵母ゲノム解析で報告されている遺伝子と相同性が見られ、また線虫、ウニ、イネ、シロイヌナズナ等のcDNAとも高い相同性が見られた。酵母の相同遺伝子を単離し、ire15変異を相補できるかについて調べたところ、ヒト遺伝子と同様に機能することが明かになった。さらにINO1遺伝子の発現に対するこれらの遺伝子やTGF-β受容体、14-3-3蛋白の遺伝子の効果を調べたところ、いずれもINO1の転写を高めることがわかった。これらの結果から、ヒト及び酵母のHCP1遺伝子産物はINO1の転写に関わっていることが明確に示された。今後はこれらの遺伝子相互の関連について解析していく必要がある。
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