遺伝子DNAが紫外線や放射線、変異原物質などで傷つけられたとき、細菌から人に至るまで全ての生物は、細胞増殖を一時的に停止させ、それらDNA損傷を修復する機構を保持していることが知られてきた。DNAの損傷を修復することなしに細胞増殖を続けると、娘細胞に突然変異が蓄積し、癌化や細胞死へとつながる。大腸菌においては、DNAに損傷を受けたときSOS応答と呼ばれる一連の転写調節機構を発動させて、DNAの修復を行う。この応答には、細胞増殖を一時的に停止させる為に細胞増殖阻害蛋白SulAの一過的な産生がみられる。今年度までの本研究により、SulA蛋白による細胞増殖阻害の機構は、細胞分裂に関わるFtsZ蛋白をその標的にしていることが、生化学的にも遺伝学的にも明らかになった。また細胞増殖阻害蛋白SulAのC末端から種々の欠失変異を作成し、in vivoにおける細胞増殖阻害活性を調べ、活性に必要な領域を検討した。その結果、C末端から21アミノ酸残基の欠失においては細胞増殖阻害活性が認められたが、34残基以上の欠失においてはその活性が失われた。
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