研究概要 |
大腸菌のSOS応答においては細胞分裂を一時的に停止させるために、169アミノ酸残基からなる細胞分裂阻害蛋白質SulAの一過的な産生が生じる。本年度はSulAのN末端30番目から130番目までにおける全ての塩基性アミノ酸とleu 67,glu 76,trp 87,val 115,glu 126とをそれぞれアラニンに置換した変異体を作成し、それら置換変異体の細胞分裂阻害活性を調べた。その結果,arg 62,leu 67,trp 77,lys 87の4箇所のアラニン置換変異体は細胞分裂阻害活性を失うことが明らかになった。arg 39,lys 72,arg 75,glu 76,his 98,arg 105,arg 108,val 115,gly 117,glu 126,his 128の11の置換変異体においては分裂阻害活性が認められた。すなわちSulAの中央部の領域は分裂阻害活性に重要な領域であることが示唆された。 またSulAのC末端の数残基がLonプロテアーゼによるSulAの分解および認識においてどのような役割をするのか調べる目的で、MBP-SulAN94(SulAのN末端94番目からC末端169までのMBP融合蛋白質)とMBP-SulAN150(N末端150番目から169まで)とを作成し、これらを基質としてin vitro精製系でLonプロテアーゼによる分解反応を行った。その結果MBP-SulAN94は野性型のMBP-SulAと同様にLonプロテアーゼにより効率良く分解され、一方MBP-SulAN50は分解されなくなった。またLonプロテアーゼの分解に先立つ基質-Lon複合体形成を同定したところ、MBP-SulA,MBP-SulAN94ならびにMBP-SulAN150はLonと安定な複合体を形成することが確認された。またこの複合体形成にはATPを要求しなかった。以上これまでの結果から、SulAのC末端数残基がLonプロテアーゼによる認識ならびに複合体形成において重要な働きをし、そして分解においても必要であるがそれだけでは十分では無いことが明らかになった。
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