出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのキャッピング酵素のグアニル酸転移酵素活性を担うαサブユニットの遺伝子CEGlの温度感受性突然変異体を単離した。現在までに10種類の変異体(cegl-1-cegl-10)を得て、その変異部位を同定した。これらはすべて劣性変異であり、cegl-10は多コピーでのみ変異体の許容温度下での生存を可能とした。また変異間での相補性はみられなかった。液体培地で増殖中の変異体を非許容温度に移したところ、各変異に特有な様相の増殖低下をもたらした。この中でcegl-10変異体は最も素早い増殖停止を示したが、温度シフト後少なくとも5時間の間はほとんど生存率は下がらず、DNA染色による観察では核の形態の異常等は認められなかった。各変異体の抽出液中のグアニル酸転移酵素活性のGMPとCegl蛋白質との共有結合体形成能を指標として測定し、すべての変異キャッピング酵素がこの活性に関して温度感受性を持つことを明らかにした。この中でcegl-8の産物は比較的高い熱安定性を保持し、また、cegl-10の産物は多コピーにもかかわらず、許容温度でも弱い活性しか示さなかった。 この研究の進行中に米国のグループにより分裂酵母Schizosaccharomyces pombeのCEGl遺伝子が単離され、その一次構造が報告された。出芽酵母、分裂酵母およびウイルスのキャッピング酵素とDNAリガーゼ、RNAリガーゼには保存された領域がいくつか存在するが、今回得られた変異の部位はこれらの領域の外にあり、出芽酵母と分裂酵母のキャッピング酵素間にのみ保存性がある箇所に存在していた。これらの変異が細胞由来のキャッピング酵素に特異的な変異であり、細胞内のキャップ形成の調節機構の解明の手がかりとなることを期待している。 (以下の結果のほとんどは現在投稿中)
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