前年度に得られたキャッピングの酵素のグアニル酸転移酵素活性を担うαサブユニットの遺伝子CEG1の温度感受性突然変異体の解析を行なった。 (1)前年度は各変異Ceg1蛋白質の活性を酵母S-100画分で測定したが、今回は変異Cegl蛋白質とGSTの融合蛋白質を作製、精製してこれらの酵素活性の特性をさらに詳細に調べた。その結果、精製した状態でのCeg1-4は非許容温度ではGMPとの共有結合体を形成できるが、その後のRNAのキャップ形成を行なえなくなっているということが判った。 (2)非許容温度における細胞内における全RNA合成のレベルを調べる目的で、温度シフト後に最も素早い増殖停止を示すceg1-10変異株を用いてパラスラベルによりウリジンの取り込みを測定した。野性株に比べてceg1-10変異株は取り込みの低下がみられたが、野性株においても熱ショックによる取り込みの抑制がかなりの間持続することが判った。ポリ(A)をもつmRNA画分、及びレポーター遺伝子のmRNAの合成量を測定するために、温度をゆっくりと上昇させる工夫を試みているとともに、他の変異体の使用も検討中である。 (3)幾つかの変異株を用いて、ジゴキシゲニンで標識したオリゴdTによるポリ(A)RNAの検出をin situで行なった。これらの株では温度シフト後2時間での細胞全域での染色程度の低下がみられ、さらに細胞質に比べて核内での局在性が増していた。 (4)キャッピング酵素と相互作用する因子の候補の同定やキャップ形成が低下した細胞の生存を許す変異の同定を目的としたCEG1変異の抑圧変異体の単離を開始した。現在までに2種のCEG1変異からCEG1外抑圧変異株の候補を得ている。また、HeLa細胞cDNAライブラリーからCEG1変異株の温度感受性を回復させる遺伝子の探索も開始した。
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