受精の初期過程においていくつかの重要な機能を持つ卵子表層の透明帯について、昨年度に引き続き、特にウシとブタに焦点を絞り構造と機能の相関について調べた。 1.ヒドラジン分解とDEAE-HPLCで得た、活性をもつ中性のN-グリコシド糖鎖を更にCon-Aアフィニティクロマトで2本鎖と3、4本鎖に分けた後、3、4本鎖グループにレセプター活性があることを明らかにした。 2.1で述べた3、4本鎖を加えると実際に体外受精が阻害されることを確認し、ブタの精子は、PZP3αのN-グリコシド中性糖鎖の内の、3又は4本鎖に結合するものと結論付けることができた。 3.リシルエンドペプチダーゼで切断したPZP3αの糖ペプチド断片のレセプター活性を調べ、3か所あるNグリコシド糖鎖結合部位のうちN末端に近いアスパラギン残基に付いた糖鎖に活性があることを見い出した。 4.ウシ透明帯糖鎖もN-グリコシド糖鎖にレセプター活性があるが単離した糖鎖は活性が極めて弱くなることを明らかにした。 5.三種のウシ透明帯タンパク質の内一番分子量の大きいbZPAに存在するスルフヒドリル基(SH基)は、受精時にすべて酸化され、SS結合が形成されるに伴い透明帯の硬化が起こることを見い出した。 6.ウシ透明帯糖蛋白質について糖鎖構造の分析を進め、ウシにはブタやマウスには無い高マンノース型のN-グリコシド中性糖鎖が存在すること、複合型の糖鎖に付いたシアル酸の大部分は受精時に除去され、酸性糖鎖は受精で中性化することなどを明らかにした。
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