リゾボスファチジン酸による細胞増殖の制御

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06680679
• 研究機関: お茶の水女子大学
• 研究代表者: 室伏 きみ子 お茶の水女子大学, 理学部, 講師 (00103557)
• キーワード: リゾホスファチジン酸 / 細胞増殖 / 受容体 / 環状リン酸基

研究概要

環状リン酸基をもつ新規リゾホスファチジン酸(PHYLPAと命名)の生理作用を解明するために、その化学合成法を確立し、PHYLPAとその立体異性体及び誘導体を合成し、それらのDNAポリメラーゼに対する効果と細胞増殖に及ぼす効果とを調べた。そして、DNAポリメラーゼ阻害には環状リン酸基が不可欠であること、脂肪酸の立体構造の違いによって効果の大きさに差があることを示した(Biochim,Biophys,Actau発表)。培養細胞の増殖に対しても、PHYLPAの環状リン酸基が不可欠であることが示され、またPHYLPAの効果は細胞によって特異性があることが示された(論文準備中)。
以上の結果から細胞表面にPHYLPAや従来のリゾボスファチジン酸(LPA)等の脂質性メディエーターに対する特異的な受容体が存在する可能性が示唆された。そこでXenopusの卵母細胞を材料として、それらの受容体の検索を行い、細胞表面にそれら複数の脂質性メディエーターに対する受容体が存在することを示した(Am.J.Physiol.に発表)、更に、詳細な検討のために、PHYLPAの標識体,抗PHYLPA抗体の作成を検討している。

研究成果

• [文献書誌] Fukasawa,M.,et al.: "Chinese hamster ovary cells expressing a novel type of acetylated low density lipoprotein receptor,Isolation and characterization." J.Biol.Chem.270. 1921-1927 (1994)
• [文献書誌] Murakami-Murofushi,K.,et al.: "Selective inhibition of DNA polymerase-X family with chemically syuthesized derivatives of PHYLPA,a unique Physarum lysophosphatidic acid." Biochim.Biophys.Acta. 1258. 57-60 (1995)
• [文献書誌] Sato,y.,et al.: "Side chain structure is critical for the transport of sterols from lysosomes to cytoplasm." Biochim.Biophys,Acta. 1257. 38-46 (1995)
• [文献書誌] Kubota,Y.,et al.: "Reduced fidelity of DAN synthesis in cell extracts from chemically induced primary thymic lymphomas of mice." Cancer Res.55. 3777-3780 (1995)
• [文献書誌] Lyliom.,K.,et al.: "Xenopus oocytes express multiple receptors for LPA-like lipid mediators." Am.J.Physiol.(in press.). (1996)