真性粘菌Physarum polycephalumのミクソアメーバから分離された新規リゾホスファチジン酸(PHYLPAと命名)を大量に化学合成し、さらにその誘導体を作って、それらの生理作用の検討を行った。まず、PHYLPAの構造と作用の関係を探るために、それらの物質がDNAポリメラーゼに及ぼす効果について検討した。そして、PHYLPAの環状リン酸基が酵素活性阻害には不可欠であること、脂肪酸部分の立体構造の違いによって阻害作用の大きさに差があることを示した(Biochim.Biophys.Actaに発表)。さらに、培養細胞の増殖阻害にも、PHYLPAの環状リン酸基は不可欠であることが示された(論文準備中)。PHYLPAはまた、その作用が細胞によって異なり、明らかな阻害効果を示す場合と、ほとんど効果を示さないものとがあった。この差異については、現在、詳細な検討を行っている。 以上の結果から、細胞表面にPHYLPAに対する特異的な受容体が存在する可能性が示唆される。そこで、PHYLPAと従来のリゾホスファチジン酸、LPAによる細胞の膜電位の変化やCa^<2+>の遊離などを測定し、それらの脱感作実験を行って、細胞表面に複数の脂質性メディエーターに対する受容体が存在することを示した(Am.J.Physiol.に発表)。
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