薬物の投与によって増殖したラット肝ペルオキシソームは投与を中止すると、急速にもとの数にもどる。この減数は細胞が自食作用によって増殖したペルオキシソームを分解するために起こる。この分解は増殖したペルオキシソームを標的にするので、極めて選択的な分解と言える。細胞内の選択的な分解はユビキチン系によって遂行されていることは今日広く受け入れられている。したがって、増殖したペルオキシソームの自食作用による分解にはユビキチン系が関与する可能性がある。ユビキチン系は標的の蛋白にユビキチンを結合させることから始まる。したがって、ユビキチンの結合した蛋白が増殖したペルオキシソームに局在するかどうかを知ることは重要である。この研究では、ユビキチンに対する抗体を調製し、これを用いて、ユビキチンが結合した蛋白のラット肝細胞内局在を免疫細胞化学および生化学的方法を用いて調べた。ラットをペルオキシソーム増殖剤で2週間処理し、肝組織をコロイド金法によって免疫染色した。ユビキチン化された蛋白は様々な細胞小器官および細胞基質に見られ、ペルオキシソームでは基質と膜に局在した。増殖したペルオキシソームにおける標識は無処理のそれの約8倍であった。ミトコンドリアやライソソームの標識は2倍程度であった。イムノブロット法でも、ユビキチン化された蛋白は増殖したペルオキシソーム分画に多くみられた。これらの結果は余分なペルオキシソームを除去する選択的な自食作用にユビキチン系が関与することを示唆する。
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