細胞分裂の調節に関与するタンパク質リン酸化酵素の遺伝子を探索し新しいセリンスレオニンキナーゼLD1のcDNAを得た。まず、この遺伝子産物がセリン・スレオニンキナーゼであるあことをin vitro translation法、免疫沈降法により得られた産物のヒストンリン酸化能により確認した。昨年度の本研究で作成した抗LD1モノクローナル抗体を用いて免疫組織染色の条件を検討し、LD1は細胞質と中心体に局在すること、特に細胞質ではチューブリンに似た繊維状の分布を示した。さらに、キナーゼドメイン以外の配列の重要性を調べるため挿入突然変異を導入したところ、N末の構造がキナーゼの活性に重要であることが示唆された。LD1は我々が独自にクローン化し一連の解析を進めてきた分子であるが全く同じ遺伝子をクローニングしたとの報告が海外の3グループからあいついだ。我々は信頼性のある複数の抗体、細胞内の局在に関する慎重な検討、精製した酵素標品によるキナーゼ活性の確認をめざしていたので残念ながら発見の第一報を掲載する機会は失った。しかしながら活性を保持したリコンビナントLD1の精製、細胞内局在性という点でこの分子の機能の解析では一歩進んだ成果を上げていると考えており、近く成果の一部を出版する予定である。
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