我々は、動物細胞の組換えにおけるトポイソメラーゼの関与を検討している。一昨年、CHO/APRT^-細胞にaprt遺伝子由来ベクターを導入した後、トポイソメラーゼII(topII)阻害剤で処理すると、ベクターの相同および非相同的組換えが促進される現象を見いだした。topII阻害剤には、作用の異なる3種類の薬剤が知られている。当初、VP-16とICRF-193を用いたが、今回m-AMSAで同様の効果を見いだし、促進現象がtopIIの阻害によることが明らかにした。 今回、遺伝子治療への可能性を追求するため、ヒト奇形腫細胞株PA-1を細胞モデルに用いて、再検討を行った。その結果、この細胞系でも3種のtopII阻害剤で、より高い非相同組換えの促進を見いだした。特に、pSV2CATを導入しtopII阻害剤で処理したが、阻害剤処理と未処理でCATの発現量に差がなかった。この結果から、核内に取り込まれたベクターの量に差がないが、ベクターが染色体へ組込まれるステップにtopII阻害剤が作用していることが示唆される。現在、染色体に組込まれたベクターの構造、特にゲノムとベクターの接続点を解析し、topIIの認識配列との関連を調べつつある。 topIIにはαとβのアイソフォームが存在する。2種のフォームの組換えおよび細胞周期における役割を直接解析するため、ジーンターゲティングにより遺伝子破壊を試みた。まず、クローン化したマウスtopIIα遺伝子を用いてターゲティングベクターを作成して、マウスES細胞に導入し、ターゲットされたクローンのスクリーニングを行っている。
|