研究概要 |
レチノイドは表皮に直接作用して角質化を制御するが、皮膚に対しては表皮粘液化生を誘起する。我々は既にレチノールで前処理したラット又はニワトリ胚真皮繊維芽細胞芽細胞の上に13日ニワトリ胚未分化皮膚を乗せて、レチノール無しで5日間培養すると皮膚表皮は粘液細胞に分化することを明らかにしている。従ってその作用機構を解明するために、レチノール前処理真皮繊維芽細胞に対する特異生が高くかつ粘液化生を抑えるモノクローナル抗体を得ることを試みている。今までにも抗体が取れているが、その抗原が高分子であり、しかも特異性が低い欠点があったので再度試みた。レチノイド処理5日胚繊維芽細胞にも表皮粘液化生誘導能があるので、5日胚,13日胚繊維芽細胞をホルムアルデヒドで固定後、PBSで洗浄して可溶性タンパクを除去し、5日胚と13日胚細胞で交互にマウスを免疫した。その結果、ELISAで差の大きいlgM抗体が18クローン取れ、そのうち1つは粘液化生を中和する抗体であった。現在、生化学的および組織化学的な研究を進めている。 一方、タンパクへのN-グリコシド結合による糖付加を抑えるツニカマイシンは、レチノールによる表皮の形態変化を殆ど抑えず粘液合成のみを抑えることを我々は明らかにした。従って、表皮粘液化生は未分化表皮とレチノール前処理真皮(細胞)との相互作用により誘起されるが、N-グリコシド結合を有する糖タンパク(基底膜構成成分、細胞外マトリックス等)の存在が重要では無いことが示唆された。
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