研究概要 |
レチノイドを過剰投与した動物では皮膚表皮が薄くなり、レチノイド欠乏食を与え続けた動物では消化管粘膜、角膜などの上皮細胞が角質化する。即ち、レチノイドは皮膚や消化管粘膜に作用して、上皮細胞の角質化を抑制して粘液分泌細胞への誘導ないしは粘膜の維持を図る。我々はニワトリ胚皮膚真皮細胞ににおいて、レチノイドにより8時間以内に発現誘導されるシグナルタンパクが表皮細胞を粘液細胞へ分化転換することを明らかにした。N-グリコシド結合によるタンパクへの糖付加を阻害するツニカマイシン、プロテオグリカンのコアタンパクへのグリコサミノグリカンの結合を抑えるp-ニトロフェニル-β-D-ザイロシドが共に粘液細胞への分化転換を抑えない事から、糖がこのシグナルに関わっていない事が示唆された。このシグナルタンパクを明らかにするために、レチノール前処理繊維芽細胞に対するモノクローナル抗体を生細胞を抗原として作製した。その結果、認識部位が繊維芽細胞のouter surfaceにあり、分化転換を特異的に抑制する中和抗体を得ることができたが、量的問題からアミノ酸配列を決定できていない。 次にレチノイドを作用させた真皮繊維芽細胞と未処理の細胞を用いて、differential displayを行い、レチノイドにより初期に発現誘導される遺伝子の解析を試みた。現在までにレチノイドにより誘導されるcDNAを数十個サブクローニングし、dot hybridization,Northern hybridizationを行ってポジテイブクローンを数個得ている。今後は、レチノイドで処理した培養ニワトリ胚真皮繊維芽細胞からcDNAライブラリーを作製し、クローニングを行って遺伝子を解析する。さらにそれが粘液化生のシグナルか否かをレトロウイルスをベクターとした遺伝子導入法を用いて検討する予定である。
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